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子宮筋腫の治療とは? ――子宮全摘術・子宮筋腫核出術を中心に解説

子宮筋腫の治療とは? ――子宮全摘術・子宮筋腫核出術を中心に解説
大石 元 先生

国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長

大石 元 先生

目次
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過多月経貧血、下腹部痛などの症状が出ている場合に治療を検討する必要がある子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)。その治療選択肢は複数あり、妊娠や子宮温存の希望があるかによっても治療方針が変わります。納得して治療を受けるためにも、それぞれの治療の特徴について知ることが大切です。

今回は、国立国際医療研究センター病院  産婦人科診療科長・第一婦人科医長の大石 元(おおいし はじめ)先生に、子宮筋腫の治療選択肢についてお話を伺いました。

子宮筋腫の治療選択肢は、薬物療法と手術に大きく分けられます。手術の方法によっては今後の妊娠が望めなくなるため、妊娠希望の有無や子宮温存の希望などを考慮したうえで治療方針を決めることが大切です。

子宮筋腫の治療として、はじめに行われることが多いのは薬物療法です。薬物療法には、大きく分けて対症療法と偽閉経療法の2つの選択肢があります。

対症療法

対症療法は、子宮筋腫による過多月経月経痛などの症状を和らげるために行います。貧血がある場合は鉄剤や止血剤、月経痛には痛み止め、月経困難症がある場合には低用量ピルなどを処方して様子を見ます。

また、女性ホルモンの一種である黄体ホルモンを放出する器具を子宮の中に入れることで、月経量の軽減を図る子宮内黄体ホルモン放出システムという治療も対症療法の1つです。器具を装着している間は妊娠できませんが、外せば妊娠することができます。

偽閉経療法

偽閉経療法とは、女性ホルモンの分泌を抑える薬を用いて月経を一時的に止めることで子宮筋腫を小さくする治療です。副作用として更年期症状や骨粗しょう症などが起こる可能性があるため、連続投与できる期間は6か月と決められています。また、薬の投与を中止すると子宮筋腫が元の大きさに戻ってしまうため、偽閉経療法は閉経間際の方や手術前に筋腫を小さくする目的で行うことが一般的です。

手術には子宮全摘術と子宮筋腫核出術の2つの方法があります。子宮全摘術は子宮そのものを取り除く手術です。そのため、今後の妊娠を希望しない方が行う手術といえます。一方、子宮筋腫核出術では筋腫だけを取り除くため、妊娠の希望や子宮温存を希望されている方にも適応となる手術です。

なお、子宮全摘術と子宮筋腫核出術のどちらの手術であっても、可能な限り腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)やロボット支援手術といった低侵襲(ていしんしゅう)手術(患者さんに負担の少ない手術)に対応しています。

UAEは子宮動脈に詰め物をし、子宮を虚血状態にすることによって筋腫を小さくする治療法であるため、子宮を温存することが可能です。子宮全摘術などのお腹を切開する手術に抵抗がある方や、輸血をしたくない方などが対象になると考えられます。

ただし、UAEの治療後は妊娠にリスクがあること、筋腫を取り除くわけではないので将来的に手術で切除しなければならない可能性があるという点は事前に知っておく必要があるでしょう。

MEAとは、マイクロ波と呼ばれる電磁波で子宮内膜を焼くことで過多月経の症状を改善する治療法です。子宮筋腫によって過多月経の症状がみられる場合には、本治療が選択肢の1つとなります。

治療後に妊娠を希望していないけれども子宮を温存したい方が適応となります。また、MEAは体に傷をつけることなく治療することができるというメリットがありますが、子宮筋腫がたくさんある場合などには適応外となるため治療適応については医師にご相談ください。

子宮全摘術とは、薬物療法で効果がみられない場合や、患者さんご本人が希望された場合に検討される子宮筋腫を根治するための手術です。子宮そのものを摘出する手術であるため、将来的に妊娠を希望されていない方が適応となります。

手術の方法は開腹手術、腹腔鏡下手術、腟から子宮を摘出する腟式手術の主に3種類があり、子宮筋腫の大きさや患者さんの状況などから手術方法を検討します。

子宮筋腫核出術は、過多月経などの症状で困りごとがある場合などに検討される筋腫のみを切除する方法です。子宮を温存できる手術であるため、将来的に妊娠を考えている方や子宮温存の希望がある方が適応となります。

手術の方法は開腹手術、腹腔鏡下手術、腟から挿入した子宮鏡を用いて手術をする子宮鏡下手術の3種類があります。子宮鏡下手術は開腹することなく手術することが可能ですが、適応となる筋腫の大きさや形状が限られます。

子宮全摘術と子宮筋腫核出術のいずれの手術においても、腹腔鏡下手術やロボット支援手術といった低侵襲手術が積極的に行われるようになってきています。低侵襲手術によって患者さんの負担を軽減することは大切です。しかし、それ以上に安全に手術を遂行し、術後に合併症などが起きないようにすることが重要であると考え、さまざまな要素から手術方法を検討しています。

腹腔鏡下手術とは、腹腔鏡というカメラで術野を確認しながら鉗子(かんし)と呼ばれる器具を用いて行う低侵襲手術です。子宮筋腫の場合、腹腔鏡を入れるためにおへそを12mmほど、それに加えて鉗子を入れるために左右の下腹部に3か所、5mmほどの切開をします。

MN作成

腹腔鏡下手術の適応

腹腔鏡下手術が適応は、筋腫の大きさや癒着の状況、手術歴といった複数の要素から判断します。なお、腹腔鏡下手術の適応基準は施設によっても異なります。

また、ある程度の大きさがある子宮筋腫の場合には、術前に偽閉経療法を実施し、筋腫を小さくしてから腹腔鏡下手術を行うことも1つの選択肢です。

腹腔鏡下手術のメリット

腹腔鏡下手術では、開腹手術と比べて以下のようなメリットがあります。

  • 傷口が小さい
  • 出血量が抑えられる
  • 手術後は早期の回復が可能

ロボット支援手術とは、ダヴィンチという手術支援ロボットを用いて行う低侵襲手術です。子宮筋腫の場合、おへその上あたりに5か所8mmほどの切開をし、そこからカメラや鉗子を挿入して手術を行います。

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ロボット支援手術の適応

子宮筋腫に対するロボット支援手術の適応基準は施設によって異なります。なお、ロボット支援手術では、腹腔鏡下手術では難しい癒着が強い症例でも手術適応となることがあります。

ロボット支援手術のメリット

ロボット支援手術の主なメリットは以下になります。

  • 傷口が小さい
  • 出血量が抑えられる
  • 手術後は早期の回復が可能
  • 手ブレを制御できる

腹腔鏡下手術では腹腔鏡(カメラ)を人間が操作しているため、どうしても手ブレが生じてしまいます。しかし、ロボット支援手術であれば手ブレを補正する機能が備わっているため、より安全な手術の提供につながるという点はメリットといえるでしょう。

子宮筋腫があることによって不妊につながったり、妊娠中や出産時にトラブルを起こしたりする可能性があります。一方で、筋腫を切除したことによって出産時にリスクとなる恐れもあるため、症状や今後の妊娠などを踏まえて手術を行うか否か、また治療方法についても判断することが大切です。

また、将来的に妊娠を考えている方は、子宮筋腫の治療と不妊治療、出産を総合的に診ることができる医療機関で子宮筋腫の治療を受けることをご検討ください。

女性にとって子宮を切除することは医学的な意味合い以上に精神的なダメージがあるため、将来的な妊娠を希望していなかったとしても子宮を温存したいと思われる方は多いでしょう。しかし、子宮筋腫核出術は子宮全摘術に比べて出血量が多い傾向や再発のリスクなどがあるため、子宮を温存したことによって体の負担が大きくなる可能性もあるという点は事前に知っておいていただきたいと思います。

MN作成

子宮筋腫にはさまざまな治療法があり、子宮を温存できる治療法を選択することもできます。ですから、子宮筋腫が見つかったからといって子宮を取らなければならないと思い悩まずに、まずは医師にご相談ください。

治療に関するご希望をお話しいただき、医師から個別の治療について説明を受けたうえで、納得できる治療を選択いただきたいと思います。

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